リレー講座。関志雄先生の「中国経済の現状と課題」

本日のリレー講座は、関志雄先生の「中国経済の現状と課題」。
野村資本市場研究所シニアフェロー。1957年香港生まれ。HP中国経済新論。
95年「円圏の経済学」でアジア・太平洋賞特別賞、03年「中国 未完の経済改革」でアジア・太平洋特別賞、07年「中国を動かす経済学者たち」で樫山純三賞

  • 経済の低迷(7.4%)と社会の不安定
  • 中所得者の罠。一人当たりGDP5400ドル(世界100位)。中南米、アジアの一部のようにこの段階になると問題(労働力不足と格差・環境・腐敗)が発生し経済が伸びなくなる。イノベーションが必要になるが、失敗すると経済発展が止まる。
  • 体制移行の罠。格差・環境・腐敗。計画経済から市場化の過程で政府の役割転換(国有企業の改革の遅れなど)遅れると経済発展は止まる。
  • 中国経済は、二つの罠に陥っている。(精華大学分析)
  • 蠟小平の先富論に続いた胡錦濤科学的発展観は、公平性も重視した「調和のとれた社会」を目指した。都市と農村、地域発展、経済と社会、人と自然、、国内と対外発展。生産性の上昇、需要構造を消費へ、工業からサービスへ。
  • 1980年頃から始まった一人っ子政策によって、生産年齢人口(15-59歳)は2015年から減り始める。
  • すでに1.6億人が都市に移った。農村では過疎化が進行。過剰労働力は解消した。有効求人倍率は1.0以上で完全雇用の段階へ。長期雇用、高い給与など売り手市場へ。成長率は鈍化。
  • 中国は豊かになる前に高齢化社会に入った最初の国になるだろう。
  • 賃金上昇は所得格差を解消の方向に向かうが、ベトナムミャンマーなどへ移転が始まった。国際雁行経済。内陸部へも向かう国内雁行経済。
  • 2007年以降は西高東低型成長の定着。北京、上海の成長率が最も低い。
  • 中国全体の潜在成長率が低下。全要素生産性向上率で頑張るしかない。
  • 社会主義--社会主義市場経済(1992年)--資本主義へ。
  • 安く海外技術が入らなくなるので、自主技術の開発へ。これは成功するかわからない。
  • 国進民退。国有企業は15%になったが、民営化は進んでいない。総論賛成、各論反対。
  • 体制移行の罠に陥った中国経済。この罠を克服することが新指導部の最優先課題。精華大学研究グループ分析
  • 5つの病状。歪んだ経済発展。体制改革の停滞。社会階層の固定化。社会の安定維持。社会崩壊の兆しが顕著。
  • 3つの方策。世界文明の主流(市場経済・民主政治、法治社会)に乗る。政治体制改革(権力の腐敗)と社会建設の加速。政府上層部によるグランドデザイン下で改革を断行。
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