知研セミナー:小野恒「誰にでも出来る共同出版の方法」ーー共著プロジェクトがいくつか誕生しそうだ。

テキストの画像のようです

主催の都築さん「デジタルの時代になっても、やはり紙の本は残ります。国会図書館にも保存してもらえます。「人が亡くなったら何も残らないが、本は残る」。共同執筆により、本を書くハードルが大いに下がります。小野さんから、構想から出版までの約1年間の流れや、留意すべきことなどノウハウを教えていただきました」。

久しぶりのメンバー、新しいメンバーの参加もあり、次につながるとてもいい会となりました。


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以下、私が参加した「共同出版」作品。

 

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 「名言との対話」4月17日。渡部昇一「金婚式は素晴らしい。50年以上の記憶を二人で共有している人は配偶者しかいない」

渡部 昇一(わたなべ しょういち、1930年(昭和5年)10月15日 - 2017年(平成29年)4月17日)は、日本の英語学者、評論家。上智大学教授。享年86。

渡部昇一の本は1976年のベストセラー『知的生活の方法』(講談社現代新書)以来、翻訳もの、歴史もの、時事ものなど、ずっと読み続けてきた。またビジネスマン時代には韓国での講演にアテンドしたこともある。空の上から富士を見て喜んでおられたことを思いだした。ソウルでは天気がよかったが「ソウルの秋」という言葉があるとおっしゃっていたことを思い出す。

20代から始めた著作は、82歳で650冊まで積みあがっている。代表作は『知的生活の方法』。コンスタントに売れており総販売部数は累計で2400万部になる。定年前の65歳で上智大学を退職したのだが、それ以降の方が刊行数が多いのは驚きだ。手書きと口述筆記で量産している。「インディペンデント」という言葉にこだわっているが、それは稼がなくても食えるという意味だ。180坪の土地、そのうち書庫は100坪。 喜寿の77歳で2億円の借金をして巨大な書庫をつくり全蔵書を書棚に飾っている。音楽家となった娘や息子の高額な楽器を買うために若い頃から借金生活だった。

「私としても、恥など多くてもかまわないから、95歳以上は生きたいと思っている」「この先やることが何も思い浮かばない人は、仏教に手を出すのも一つの道だと思うのだ」「時間は20歳の時には時速20キロで流れ、60歳では時速60キロで流れると感じられると考えればいいだろう」「ある国を知るひとつの方法は、その国でどんな本がベストセラーになっているかを見ることだと思う」「人の上に立つ人間ほど、朗らかで大らかで、寛容でなければならないと思う」

文科系は蓄積であり、高齢者に適しているのは、修養、人間学がいいと言う。私の人物記念館の旅も、その線上にあると思う。

機械的な仕事の方法こそが、決定的に重要である。(私の場合は、毎朝のブログ)

高齢者に適しているのは「人間学」だと思う。「修養」といってもいいかもしれない。人間学の中心になるのは古典や歴史だ。、、、修養は不滅である。人間学を学んで修養を積んでいる人は、いつまでも衰えない。(私の場合は、「人物記念館の旅」)

・人生においては、短い名句が力になることがある。(私の場合は、「名言との対話」がそれにあたる)

以下、読んだ本の感想から。

渡部昇一 一日一言』。渡部昇一という人物が、 どういう原材料で構成されているかがわかる本だ。そうなっていない自分を叱咤して、あそこまでになったということだろう。箴言が人を創る。あなたの好きな格言を教えてくれ、そうしたらあなたがどんな人か教えてあげよう。

向上心が高く、そして何より素直な人だと思う。人がいいといいものは何でも試してみている。健康についても関心が強く、あらゆるものに手を出している。また先人のいうことには素直に従ってみている。この人が、米寿、卒寿、白寿と年齢を重ねて、その都度何を言うか、楽しみにしていたのだが、86歳で永眠された。

渡部昇一 は、音楽家となった娘や息子の高額な楽器を買うために若い頃から借金生活だった。人間学を学ぶ月刊誌『致知』の特集の「父と子」の中に「父・渡部昇一が遺したもの」と題した記事があった。長女・眞子(ピアニスト)、長男・玄一(チェリスト)、次男・基一(ヴァイオリニスト)。いずれも桐朋学園大学の卒業生だ。子ども達が音楽の道に進んだために、高額な楽器を買うことになり、本を書きまくったと書いていたことを思い出した。それが原動力となって多くの著作が生まれたのである。その子ども達から見た渡部昇一の日常が垣間見えた。「それぞれ日課を課されていた。長女は百人一首、長男は論語、次男は俳句を覚えさせられた。例外をゆるさなかった」「70歳を過ぎて10万冊の書庫を建てて以降、著述に一層情熱を燃やすようになった」。

『名著で読む「日本史』(扶桑社)。歴史の専門家は30年から50年の間に関する知見は深いが、「通史」を書ける人はなかなかいない。専門家と素人の中間の人間として日本史を描こうとした著者の最晩年の著作である。日本とは何か、日本人とは何か、こういう問いを抱える身には参考になった。近現代では、『軍閥興亡史』(伊藤正徳)、『近世日本国民史』(徳富蘇峰)、『日本文化史』(辻善之助)、『紫禁城の黄昏』(R・F・ジョンストン)、『「東条英機宣誓供述書』。

実践 快老生活--知的で幸福な生活へのレポート』(PHP新書)。「その健康法を実践している人が長生きしているものを選ぶにかぎる」「午後1時間の昼寝」「塩谷信男先生の「正心調息法」ーー息を吸う・息を止める・下腹部に力を入れる・息を吐き出す・小さな呼吸を一つする。この動作を一日に25回繰り返す」「真向法」「伊豆の石原結実先生の断食サナトリウム。人参ジュース。年2回」「自分が居るべき場所にいると感じるのは、自分が築いてきた書庫兼書斎に入っているときである」「文科系は蓄積。高齢者に適しているのは、修養、人間学がいい」「凡そ生気ある者は死を畏る。生気全く尽くれば、この念もまた尽く。故に極老の人は一死睡るが如し」(佐藤一斎「言志耊録」)。苦しまずに死にたいのであれば、最良の答えは「長生きをすること」に尽きるのではないだろうか」。

谷沢永一との共著『人生後半に読むべき本』では以下をあげている。ハマトン「知的生活」「知的人間関係」・伊藤整「氾濫」・藤沢周平「三屋清衛門残日録」・松本清張「短編全集」・清水正光「評釈伝記小倉百人一首」・高浜虚子「俳句はかく解しかく味わう」・立花隆日本共産党の研究」・松下幸之助「21世紀の日本」・本多静六「私の財産告白」・アレキシス・カレル「人間--この未知なるもの」・幸田露伴「努力論」・吉川英治「三国誌」「新書太閤記」」「新・平家物語」・池波正太郎仕掛人藤枝梅安」・岡本綺堂「半七捕物帳」・ 「唐詩選」・ヒルティ「幸福論」・伊藤正徳軍閥興亡誌」。

紀田順一郎『蔵書一代』(松籟社)。この本に記されている著名人の蔵書数が興味を惹いた。井上ひさし14万冊(山形の遅筆堂文庫)。谷沢永一13万冊(関西大学谷沢永一文庫)。草森紳一6.5万冊(帯広大谷短大草森紳一記念資料室)。布川角左衛門2.5万点(国会図書館に布川文庫)。大西巨人0.7万冊。立花隆3.5万冊。山下武2万冊。江戸川乱歩2.5万冊。(徳富蘇峰10万冊)。渡部昇一は15万冊。だった。

渡部昇一は50代以降に様々な分野の本を出したが、出版数では70代が最多で「週刊渡部昇一」と呼ばれたほどだ。手書きと口述筆記で量産している。ブクログ」でユーザーが読んだ渡部昇一の844作品が件数の多い順に並んでいる。その数字は無くなる数年前だから、ここに載っていないものも含めるとどこまで積みあがっただろう。

儒教の教えでも仏教の教えでも神道の教えでも何だって構わない。あらゆるものが磨き砂になるんだ」とも、高齢者へアドバイスしている。

異常に見るように渡部昇一の名言は多いが、「金婚式は素晴らしい」という言葉を取り上げたい。荒波の襲う人生の中で、結婚という大事業をともに推進してきたことを祝うのが金婚式だ。人生の断片の記憶を共にした人はいるが、50年以上の共通の記憶があるのは配偶者しかいない。その素晴らしさを語っているのだ。