4月から新装された「放送100年保阪正康が語る昭和人物史」は、ノンフィクション作家の保阪正康とノンフィクション作家の梯久美子の掛け合いの番組となった。二人は同業なので情報量が多い。
「ブライダル」の桂由美の3回目。89歳の時のインタビューを聴いた。「経済成長と結婚式の姿」「和装と洋装の逆転」「振袖、ドレス、打掛」「お色直し」「自身の結婚」「美智子妃という存在」など興味深い話を聞いた。
2020年に「NHKラジオ 聴き逃し」の「文化講演会」の桂由美「ブライダルファッションとともに54年」と題した1時間の講演を聴いている。以下、そのときのメモ。
- 「和装婚がほとんどでウエディングドレスを着る方が3パーセントしかいなかった46年前の日本で、先を見越し、ウエディングドレス専門の事業を手がけた起業家(パイオニア)などと紹介されることが多いのですが、とんでもありません。その3パーセントの方々が気の毒で、何とか役に立ちたいと社会事業のつもりで始めたというのが本当のところです」
- 「常々私は「生涯現役」と言っているのですが、やはり好きな世界に自分を投入していると、それが長く続いていくのだと思っています」
- 「結婚する人を最高に美しく見せたい」
- 「利益追求しなかったから、経営を50年も続けられた。10年も苦難の時期を過ごして、その間の自分には無給」「結婚適齢期だった20代は、母が経営していた洋裁学校を手伝うのと、自分の夢であるブライダル事業の二足のわらじで、目が回るほどの忙しさ」
- 「多くのカップルの結婚式をお手伝いしてきましたが、私自身の結婚は42才の時」
- 「「才能」とは英語でギフト、贈り物という意味があるように、『神がその人に与えた贈り物』です。しかし、「センス」は神からの贈り物ではありません」
- 「お客様のわがままからヒットの花が咲く」
- 「夢はお城のように ビジネスは岩のように」
- 「振り返ると、手帳に記した一つひとつを実現してきたのが、私の人生なのだと思います。ブライダル協会を作る、ウエディング・プランナーを育てるなど、その後私が実現してきたことは、全部その手帳に書いてあったことなのです」
「ラジオ深夜便アーカイブス」では映画監督の山田火砂子(1932ー2025年)の89才時のインタビューの再放送。山田火砂子が伝えようとしいる先人の姿、特に優れた女性の生涯を知って欲しいという強い志に深い感銘を受けた。64歳で監督デビュー。「はだしのゲン」、「春男の翔んだ空」、「裸の大将放浪記」、「石井(十次)のおとうさんありがとう」、「一粒の麦 荻野吟子の生涯」などの作品がある。
- 矢島楫子(1833年6月11日〈天保4年4月24日〉 - 1925年〈大正14年〉6月16日):婦人参政権運動、禁酒運動、廃娼運動、夫婦一夫一婦制、男女平等論など女性のために社会改革運動を推進した矯風会の創立者。映画「われ弱ければ 矢島楫子伝」。矢島楫子は蘇峰と蘆花の叔母原作を書いた三浦綾子の旭川の文学館には訪問している。熊本県益城町の「四賢婦人記念館」(猛婦:竹崎順子・徳富久子・横井つせ子・矢嶋楫子)には行かねばならない。
- 荻野吟子(1851年4月4日〈嘉永4年3月3日〉 - 1913年〈大正2年〉6月23日):日本初の女医。「一粒の麦 荻野吟子の生涯」「人と同じような生活や心を求めて、人々と違うことを成し遂げられるわけはない。これでいいのだ」。埼玉県熊谷市の荻野吟子記念館は訪問している。
- 石井筆子(1861年4月27日) - 1944年)1月24日):日本初の知的障害児施設「滝乃川学園」。映画『筆子その愛ーー天使のピアノ」。滝乃川学園には訪問している。
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スイミング、今日は600m 。
ウイーキング9200歩。
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「名言との対話」5月20日。降旗康男「失敗したとか負けた人とか、そういった人たちを描くのが映画だ」
降旗 康男(ふるはた やすお、1934年8月19日 - 2019年5月20日)は、日本の映画監督。享年84。
祖父、父ともに代議士である長野県の名門に生まれる。松本深志高校から東大文学部仏文科卒業。1957年東映に入社するが、労働争議に熱中。共産党支持者だった。1966年東映京都所長の岡田茂が「非行少女ヨーコ」で監督に起用する。
時代劇はやりたくない、成功者の映画は撮りたくないと主張し、一時干されてテレビの演出も多数行った。
高倉健とは1966年の「地獄の掟に明日はない」で出会う。1974年にフリーとなり山口百恵主演「赤いシリーズ」などテレビ映画を多数担当した。1978年、「冬の華」で東映ヤクザ映画に復帰し、高倉健とのコンビを続けて20本撮っている。1999年に高倉健主演「鉄道員」で、日本アカデミー賞監督賞・脚本賞を受賞する。
高倉健とのコンビで「新網走番外地」シリーズや「冬の華」「駅 STATION」「鉄道員(ぽっぽや)」「あ・うん」などを監督し、ヒットさせる。
高倉健を評して「2度、同じ事は出来ない俳優。面倒くさい俳優だが、面白い俳優だと思う」とインタビューで語っている。若い頃の高倉健の仁侠映画は同じことの繰り返しだったことに同情している。「脚本のどこか1行に、背筋がぞくっとするようなものがあれば、僕はその1行を頼りに出演を引き受ける」と高倉健は語っていたそうだ。単なる美形のスターから生まれ変わった。不器用だと自覚して、考え抜いて演技をした。「どんな役の人物の中に高倉健がいる」。
2002年「ホタル」で芸術選奨。2013年、「あなたへ」で日本アカデミー賞優秀監督賞。80歳を越えてからもメガホンをとった異色の映画監督である。
インタビュー映像をみた。「失敗したとか負けた人とか、そういった人たちを描くのが映画だと思っている。映画は、自ら状況や境遇の不運を引き受けてしまう“不幸な人”、自ら幸せや幸運を捨てて行く人たちを描くもの、そこでの人間の人間らしさ、悲しさや美しさを描くのが映画じゃないかと思って、これまで撮り続けてきた」
『永遠のゼロ』で主役を演じた岡田准一を人間に内在する“陰”を演じきれる、いまの日本映画界では数少ない主演俳優だと思って起用している。
シャイでク口数は少なかったといわれるように、インタビュー映像では、含羞をみせながら、トツトツとゆっくり喋るのが印象的だ。静かな人である。
降旗康男監督には48作品がある。失敗、敗北、不運、不幸、陰、悲しさ、その人たちの美しさを描いたこの監督の映画は「網走番外地」くらいしか見ていない。これを機会に「鉄道員(ぽっぽや)」、「ほたる」「あなたへ」などをみたい。