『アクティブ・シニア革命』『図解の技術 大全』「絶望名言アンコール・ベートーベン」『絶望名人 カフカの人生論』

『アクティブ・シニア革命』の調整。橘川さん、出版社と連絡。

最近著『図解の技術 大全』は「堅調」との報告が日本実業出版社からあった。

散髪への往復で「読書」。

オーディブル中島敦『弟子』を聴く。孔子と弟子の子路の師弟の物語。

弟子

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NHK深夜便「絶望名言アンコール」は「ベートーベン」。この人ほど絶望を味わった人も珍しいのではないか。ロマン・ロラン『ベートーベン』を読みたくなった。

自宅の本棚に『絶望名人 カフカの人生論』があった。頭木弘樹さんの編訳。

心がつらいときにには、ピュタゴラスは「悲しみを打ち消すような明るい曲を聴くほうがいい」と言い、アリストテレスは「そのときの気分と同じ音楽を聴くことが心を癒す」と主張した。二人の意見は真っ向から対立しているが、実は両方とも正しいのだ。

以上は音楽の場合だが、名言も同じだろう。ここで思い出すのは、仏教の「慈悲」だ。様々の説明があるが。五木寛之の慈悲とは「はげましとなぐさめ」という解釈に私は納得している。

悲しみの中にある人には、まず、寄り添ってなぐさめる。ひたりきったら、次にはげますのだ。

私の「名言との対話」は、「はげまし」の言葉を意識的に拾ってきた。真理としては半分なのだろう。

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「名言との対話」2月6日。小澤征爾「中国で生まれ日本で育った僕がどこまで西洋音楽を理解できるか。一生をかけて実験したい」

小澤 征爾(おざわ せいじ、1935年昭和10年〉9月1日 - 2024年令和6年〉2月6日)は、指揮者。享年88。

満州国時代の中国・奉天生まれ。桐朋 学園で斎藤秀雄に指揮を学び、卒業の翌年の1959年に渡欧し、ブザンソン指揮者コンクールに優勝。1960年夏のアメリカのバークシャー音楽センターの指揮者コンクール第1位、続いてカラヤン主宰のコンクールでも優勝。1961年バーンスタインに認められてニューヨーク・フィルハーモニーの副指揮者に就任。以後、カナダのトロント交響楽団サンフランシスコ交響楽団などの音楽監督を歴任したほか、世界各地の音楽祭にも出演。

1973年から2002年まで19年間、ボストン交響楽団音楽監督を務めた。2002年から2010年までは世界三大歌劇場の一つであるウィーン国立歌劇場音楽監督を務めた。

日本では1972年以降、新日本フィルハーモニーの首席指揮者を務める。1972年芸術院賞受賞。恩師の斎藤秀雄を偲 んでサイトウ・キネン・オーケストラ1984年に組織し、1992年以降、毎年夏に長野県松本市で開催される音楽祭「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」(2014年までは「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」)では、総監督を務めた。2001年文化功労者、2008年文化勲章を受章。

小澤征爾 指揮者を語る』(PHP)を読んだ。2012年の出版で、2009年時のインタビュアーは有働由美子である。

小澤はピアノをやっていたが、ラグビーで指をけがして指揮に進んだ。山本直純東京芸大の作曲科から指揮科に転じている。後輩の小澤征爾は後に「音楽のピラミッドがあるとしたら、オレはその底辺を広げる仕事をするから、お前はヨーロッパへ行って頂点を目指せ」と言われたと他の本で語っている。

1959年、パリで仕事がなく日本に帰りたいと、小説家の井上靖に言ったところ、どこの国でも一言もしゃべらずにお客が音楽を聴いてくれる。そんな素晴らしい芸術はないと励まされている。

この本では、師匠として、斎藤秀雄カラヤンをあげている。

斎藤秀雄は指揮についてのシステムを確立し、指揮法を後進に伝えた唯一の日本人である。「音楽も言葉と同じで、主語あり、動詞あり、形容詞ありで、文法と同じに分析できる」と語っていた斎藤は、1956年に『指揮法教程』(音楽之友社)を刊行。英文法の理論書や、英和・和英辞典を独力で編纂した父・斎藤秀三郎と同じく、指揮法を体系化し、世界に誇る指揮法の文法を創り出したのである。その方法を教育の場に持ち込んで、日本が誇る小澤征爾岩城宏之山本直純尾高忠明らを育てたのである。方法論が素晴らしかったのであろう。斎藤の功績は大きいものがある。

斎藤秀雄に指導を受けた小澤征爾は、演奏法、表現法、音楽の語法など、もらったものをポケットに入れておいて、仕事では少しずつだしていった。その基礎に自分の勉強をプラスしてやってきた。小澤は40歳を超えて斎藤から頼まれて桐朋学園で教え、後進を育てることが面白くなっていく。

カラヤンは「すごく偉くて、魔法みたいな指揮をする人だった」。「インバイトだぞ、指揮は」と教えてくれた。インバイトとは、招待するという意味だが、無理に押し付けない、その人を波に乗っけてあげるということらしい。オーケストラの指揮では7割ぐらいが納得してくれれば相当うまくいく。指揮台でほんのちょっと腕のラインを動かしただけで、楽員がわかるのがいい指揮者だそうだ。

小澤征爾の言葉を拾った。

「この商売はほんとに、時間がかかりますからね。勉強にね」。

「言葉よりも音楽の場合はね、本当にニュアンスの差がちょっとで違うから。幅というか高さなのかは知らないけど、奥深いんですとよ」。

「音楽は、非常に『個』の強いものです。一人一人の経験の中から、じわじわっと出てくる」

作曲家を解釈していく。人間性が出る。

2024年の文芸春秋4月号に小澤の発言が掲載されている。「中国で生まれ日本で育った僕がどこまで西洋音楽を理解できるか。一生をかけて実験したい」と語っていた。友人、先輩、そして二人の偉大な恩師の薫陶を受けて、その大いなる実験は大成功したのである。